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ツェーザルを後ろ脚で蹴ろうとして失敗しまくったわたしは、ゼーゼーと息を切らせて諦めた。
「おチビは魔法を見たことないって言ってたが、じゃあ今初めて使ったのか?」
「そうだぞ!」
「あんなに大がかりな魔法をバンバン撃って疲れた様子もないくらい魔力持ってるのに、魔法使ったことないのか?暴走も?」
「白いのが「竜の血のおかげで喋れるようになったみたいだね」と言ってたので、たぶん全部竜の血のおかげなのだな。魔力だったか?そんなものヴァイスは持ってなかったし」
「竜の血を飲んだのか!?よく生きてるな」
「飲んでない。浴びたのだ」
「なおさらひでぇ」
わたしがいいかげん見飽きた岩場もそろそろ終わろうとしていたが、ツェーザルは方向転換して歩き続け、洞窟の前で立ち止まった。
「入るのか?なにかが中にいるぞ?」
「気配読めるのか?だが問題ない」
ツェーザルはわたしを抱えていない方の手を突き出した。
その手から、ブシャアアアッと液体とも煙ともつかない紫色の毒々しいなにかが放たれ、洞窟を満たす。
「な、なんであるかその毒々しいの…」
「毒だ。俺は毒竜だからブレスも毒のブレスになる」
「手からブレスを吐いてるのか?」
「人間形態の時に口から吐いたら汚物みたいだろ?」
さほど広くない洞窟の中は、地面からシュワシュワ煙が立ち上り、すみっこの方でグズグズになった動物らしきものの死骸が残っている。
え、エグい。
引いているわたしとは対照的に、ツェーザルは満足げに頷いている。
「よし、よし。
おチビは竜の血を浴びたんだよな?なら人化できたりしないか?」
「なんでんなことしなきゃいけないのだ?」
「これから街に行くのにこんなちっこい毛玉連れてたらあっという間にさらわれると思って」
「やってやるぞ!」
「素早い手の平返しだな…」
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