に、てんご

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目が潰れそうな光で視界が塗りつぶされ、私達はわけも分からず知らない世界に放り出された。 幼なじみの琉斗と亜里沙と道を歩いていたら、珍しいものを見た。 あの鉄壁の鉄面皮、大衆の前で勇気ある女子に告白されても眉ひとつ動かさなかったという噂すらある黒矢彩雅が、必死の形相で道を駆けていたのだ。 ーーー真っ白な兎を抱えて。 そういえば黒矢は愛兎家だった。 うっすらほほえみすら浮かべて、甘い声で飼い兎に語りかけるのを見て唖然とした記憶がある。 そうか、あれはあの時の兎か。と思った。 黒矢はどう見ても急いでいたし、兎はグッタリしていたから、少し声をかけてすぐに別れる…それだけのはずだったのに。 「成功だ!」 光源は分からないが突然眩しすぎる光に照らされてから、ワッと歓声が聞こえる。 なにか実験でもしていたのだろうか、こんな公共の場であんな光を出すなんて非常識だーーーと文句を言おうとした声は、喉の奥で詰まって消えた。 私達はいつのまにか、怪しげな黒魔術だとかそんな感じのことを始めそうな、フードを被った集団に囲まれていた。 そして次に気づいた、なぜか建物の中にいる。 素早く後ろを振り返って、琉斗も亜里沙も黒矢もいることを確認し、ホッと息を吐く。 しかし黒矢はなにやらぼう然としている。 「ようこそおいでくださいました、勇者様がた」 乳白色の髪の外国人がにこやかに話しかけてきた。 「は?勇者ァ?」 私達の中で一番血気盛んな性格をしている亜里沙が、真っ先に我を取り戻し、なに言ってんだこいつと言わんばかりの声色で尋ね返した。 「はい。詳しい話を謁見の間でいたしますので、どうかついてきてくださいますか?」 意味は分からないが説明をされるならと、私達は目くばせして乳白色の髪の外国人についていこうとした。 「…………を…………った」
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