さん

2/13
515人が本棚に入れています
本棚に追加
/203ページ
コンスタンツェにもらった金貨でまずなにを買ったかといえば、人参…ではなく服だ。 兎時代、人間はよく皮を変える不思議な種族だと思っていたが、皮じゃなくて服らしい。 たしかに肌はすぐに傷つきそうで、服で覆わなければいけないという気持ちも分からんでもない。 とはいえ、あれもいいこれもいいと目をギラつかせる店員と一緒になって、おもしろがって山盛りの服を持ってきたツェーザルは許さん。 絶許である。 金貨はまだまだあるが、確実に減ったのだ! つまりは買える人参が減ったということではないのか!? 「お前の頭ン中は人参ばっかりか」 力説したが、ツェーザルに頭を小突かれる。 「ご主人のことも考えてるぞ」 「ご主人、ご主人ねえ…。おチビの話によくそのご主人が出てくるが、どんな奴なんだ?」 「ご主人のことが聞きたいのか!?ならば話すこともやぶさかでないぞ。 ご主人はな、人参をたーくさん持っているのだ」 「…。それで?」 ダメだこいつ、みたいな顔を即刻やめるのだツェーザル。わたしのご主人への愛はすごいのだぞ。 「なんと!ヴァイスはご主人の顔を見分けられるのだ!」 「…え?逆に聞くが、お前ほかの人間の顔見分けついてないの?俺の顔も?マジ?じゃあどうやって見分けてるんだ」 「ツェーザルは髪が紫だから見分けがつきやすいぞ。目が片方しか開いてないのも高ポイントである」 「そういう感じか~…」 なにやらツェーザルがうなだれている。 通行の邪魔だからやめるのだ。 「…あ、ここがギルドだ」 「ほーう。これがツェーザルの仕事場なのだな」 赤茶けたレンガにツタが這う大きな建物。 それがギルドだった。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!