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「グルルルル」
「グゥ?」
「ゴアアアアア!」
光がやむと、ご主人の温もりが消え失せ、代わりに硬くて冷たい地面の上にわたしは放り出されていた。
もう…げん、か…い…。
先ほどから頭上で鳴り止まない、ギャアギャアグルグルいう爆音も気になるが、わたしの意識はすこんと落ちたのであった。
『あれ、寝ちゃったよ?』
『大変!こんなに小さくてか弱いのに、死んじゃう!』
『傷はないのに死臭がしはじめてるぞ?毒でも食らったのかもしれない』
『急がなきゃ!』
川の向こうに人参畑と死んだはずの兄弟が見えたと思ったら、強烈な鉄臭さで叩き起こされた。
「キュ!?」
『いやーん「キュ!?」だって、可愛い!』
『こんなに弱そうな生き物に、竜の血なんてむしろ毒かと思ったけど…奇跡的に生きてるね』
『確信なかったのに血ぶっかけたのかよ。ひどいな』
わたしよりも果てしなく巨大な化け物達が、額を突き合わせて何やら話し合っている。
…ごごごご主人!!
あなたの大事なヴァイスが餌になろうとしているぞ!!
至急お助け!!!
心の中で絶叫していると、オレンジっぽい化け物が長い首をにゅっと伸ばして、わたしに顔を寄せてきた。
『大丈夫?生きてるよね?なんかプルプル震えてるけど…』
開いた口から覗く、鋭すぎる大量の牙!チロチロ出し入れされる二股に分かれた舌。
「…ふぅっ」
『『『あ』』』
わたしが気絶したのは、自然な事だったと思うのである。
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