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夢ならよかったのに…。
「キュ、キュウ…」
やっぱり化け物達に囲まれているのである。
わたしが一体何をしたというのであろうか。
ついでに今気づいたが、自慢の白い毛並みが赤茶けたガビガビに成り下がっている。
非常に臭いし、もう散々だ。
『えーっと、君に危害を加える気はないから怯えるのはやめてほしい』
無茶言うなである。
わたしはよく兄弟達には能天気だとか言われたものだが、こんな獰猛そうな化け物に囲まれて、なお平然としているほど強靭な心臓は持ち合わせていない。
『無理だろ。俺だってこんな体格差ある相手に囲まれたらビビるわ』
よく分かってるではないか薄水色!
オレンジっぽい色が顔を近づけて、ブフーッと鼻息を吹きかけてきた。耳がそよぐ。
『大丈夫!食べたりしないよ!可食部少なそうだもん!』
『それは理由としてどうなんだ…』
いや、下手に親切にされるよりも安心できる理由である。
わたしはちらっと化け物達を見上げる。
まず鋭い鉤爪つきの指一本一本が、わたしの体の幅よりも太い。怖い。
大樹のような、つるつるぺかぺかの鱗が生えた脚、脚が可愛く見えるほど立派な胴体。怖い。
そして極めつけに、三者三様の強面すぎる顔。怖いって。
『とりあえず、せっかく白かったのに血でガビガビだから水かけるぞ』
その言葉の意味を考える間もなく、だばーっとぬるま湯がかけられた。
うっぷ、あっぷ、息、できな…くない?
なんだかよく分からないうちに、ぬるま湯は止まった。
『よし、白くなったな』
『僕とお揃いだね』
確かに化け物のうちの一体は、白い鱗を生やしている。
今までただ睨まれている気がしていたその白い化け物は、わたしが見ても分かるくらいに嬉しそうな顔をした。
その顔を見て、単純なわたしは「アレ?あんまり悪いやつじゃない?」と早くも警戒心を投げ捨てたのであった。
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