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「離すのだ!」
「おっ、おチビちゃん話せるのか?兎かと思ったが角もないし喋るし小さいし、ますますもって分からんな」
人間はぷらぷらとわたしを揺らしてきた。
…くっ、後ろ脚が届かない…っ!
『それで?可愛い子らよ、この毛玉は一体何だ?』
『あのね!あのね!いきなりパッて現れたの!』
『人間が魔の力を使う時に必要だっていうあの光る模様みたいなのが出て、そしたらこいつがいたんだ』
『死にかけていたから、血をかけたんだ。そうしたら喋るようになったよ』
三兄弟は口々に母竜へ説明し、母竜は頷く。
『食ってしまおうとは思わなんだか?』
『だって可食部少なそうだし、なによりもすっっっごく可愛いし!』
『って姉さんが言うから僕達食べるのやめたんだ』
なんと…わたしは黄色いののおかげで一命を取り留めていたのか!
ありがとう黄色いの!
『ところで紫のおじさんがくるの、珍しいね!』
『こやつは何ぞ面白そうなことがある気がするだとか言いおって、我を足代わりにしおったのだ。自らの翼でやってくればいいものを』
「人間の姿が性に合ってるからな。竜の姿に戻っても違和感がある」
こやつ、竜だったのか!?
確かにご主人達とは違う匂いがするが…。
「お、なんだよ鼻ヒクつかせて。…こいつ可愛いな…」
『でしょー!』
なぜ黄色いのが自慢げにしているのだ。
わたしの可愛さを誇っていいのはわたしかご主人だけであるぞ。
「こいつ連れ帰ってもいい?」
『えーっ!』
『紫のおじさんの提案はほぼ決定事項じゃないか。大事にしてね。か弱いから』
『たまには連れてきてくれよ』
そんな感じで、せっかく慣れつつあった竜の巣から出ることになったのであった。
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