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わたしは久しぶりに人化を解いて、白兎の姿に戻った。
ドレスがバサリと覆い被さり、視界を塞ぐ。
「出れぬのだー!」
ツェーザルがわたしの首根っこを掴んで持ち上げる。
発達した後ろ足がプランと宙に浮いた。
「兎!?しかも地球の!」
「兎…なのですか?それにしてはツノもありませんが…」
ホルガーがなにやら驚いて叫んでいて、ゴットロープが困惑している。
真っ先に騒ぎそうな女性陣を見ると、メルツェーデスもクリスティーネもマーリアおばあちゃんも、目をキラキラさせてわたしを注視していた。
「あら、あら、まあ、まあ!」
「か…っわいいです…!」
「たしかに兎に似ているけど少し違うわね…ってそんなことどうでもよくて!
《闇》の、ちょっと、ちょっとでいいから触らせてくれないかしら?」
「あんまり構いすぎるなよ?構われすぎると具合悪くなるって本人が言ってたからな。
ほら、おチビ」
ツェーザルはわたしをそっと床におろす。
わたしはトッテケトッテケと打ち震える女性陣の前まで行き、固唾を飲んでわたしを見る彼女たちの顔を見上げた。
「さ、触ってもいいですか?ヴァイスさん」
「お、お手柔らかに頼むのだ」
なんだか目が血走ってて怖かったが、真っ先に手を伸ばしてきたクリスティーネは予想外に優しくわたしに触れた。
聖女と呼ばれるだけあってか弱い生き物への接し方は心得ているのだな!
ん?その理屈はおかしい?
「わあ…!フワッフワですよ、フワッフワ!」
「ヴァイスちゃん、おばあちゃんにも撫でさせてくれる?」
「いいぞ!メルツェーデスも触るがいい!」
「そ、そう?じゃあ遠慮なく…」
五分後、わたしは安請け合いしたことを心底後悔することになる。
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