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ポイントを通過する電車の揺れは思ったより大きくて、私はふらりと身体のバランスを崩した。
咄嗟に近くにあった手すりに掴まり、自分の体重を支える。
一息つくのとほぼ同時に、コートのポケットに入れていたスマートフォンがポロンと軽やかな音を立てた。
マナーモードに切り替えてから、通知を確認する。
「幸ちゃん、もうすぐ着く頃?」
「尚登が駅まで迎えに行くって聞かないのよ。でも、尚登の運転は信用出来ないから私が車を出すわね」
「↑って言ったら怒られちゃったわ」
焦り顔の絵文字が続けて届く。
無料で簡単にやり取りできる通信アプリを覚えてから、義母の連絡は頻繁になった。
屈託なく微笑む義母の顔が思い出される。
私の選んだやさしい人の母親は、やはりやさしく、よく笑う、良い人だった。
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