2 危ないお仕事

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「『暫く仕事しなくていい』記念にすき焼きにしたんだけどな……」 「お! 大金ゲットの前祝に丁度いいじゃん! 流石ハル! 気が利くな!」 「嬉しくない……」  精一杯、苦々しい顔をして見せたが、晶には全く効果は無かった。 「じゃ、せめて今日は行きも帰りも僕が運転するからね!」 「えー? しゃーねーなぁ。たまには譲ってやっか。じゃ、ビール飲もうっと」 「あ、こら、『仕事』前に……! あ、あーっ!」 「へへーん」  陽翔の制止などどこ吹く風で、晶はビールの缶を開け、にやにやと口を付ける。 (確かに晶はザルだから、一本ぐらい飲んだって水みたいなもんだけど……!)  ああ言えばこう言うし、こう言えばああ言う。晶には何を言っても力技で言いくるめられてしまう。  結局のところ、陽翔自身が『晶の好きなようにさせてやりたい』と思ってしまっているからいけないのだ、と自覚はしている。  本当は、本当に晶のためを思うのなら、力づくでも止めさせなければいけないのだ。あんな『仕事』とか。 (でも、あれは、きっと復讐だから――)  晶を女扱いして、性欲の対象としか見ない下衆な男たちへの復讐――。  だから、止めさせるべきだ、と思いながらも、気が済むまでやらせてやりたい、とも思ってしまっている。  いつか晶の気が晴れたら、そうしたら改めて二人でちゃんと生きていける気がする。 「ハルー。生卵は?」 「あ、ごめ! 今、持ってく!」 (いつか――もうすぐ――ちゃんと生きていける――だからもう少しだけ何事も起こりませんように――……) 「いただきまーす!」  無邪気な笑みを浮かべて手を合わせる晶を見て、陽翔も祈るような気持ちで食卓に手を合わせた。
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