2 危ないお仕事

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     *  二人が新宿に着いたのは午後十一時を回った頃だった。  先週とは離れた場所にバイクを停め、互いに他人のフリをして良さげな『仕事場』を物色する。  と言っても、実際に物色しているのは晶で、陽翔はその晶を数メートル離れて追っている状態だから、よくよく注意して見る者がいたら陽翔のことをストーカーだと勘違いするかもしれない。  幸い今日もストーカーだと勘違いされる前に、晶が小じんまりとした手ごろなバーを見付け、先に店に入った。十分ほど間を置いて、陽翔も同じ店に入る。 「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」  四十ぐらいの口髭を生やしたマスターが、カウンターの中でグラスを拭きながら客を迎えた。小さい店だから探すまでもなく晶はすぐに見つかった。  カウンター席で、小太りな男のすぐ隣に陣取っている。  彼が今日の獲物なのだろう。いつものように、晶と獲物の会話が聞こえるよう、陽翔は斜め後ろのボックス席を選んだ。 「ご注文はお決まりですか?」 「オレンジ……あ、あーっと……モ、モヒートで」  いつも通りオレンジジュースを頼みかけて、陽翔は慌てて目についたカクテルの名前を適当に頼んだ。  未成年、且つドライバーだからと今まではジュースを頼んでいたが、一人でバーに来てジュース一杯で帰る客が怪しいと言われれば確かにそうだ。 (とりあえずお酒を頼むだけ頼んでおいて、飲まなきゃいいんだ。うん。頼んだものの、飲む気にならなかった客だってたまにはいるだろ。たまには……)  そう言い聞かせて、陽翔はモヒートのグラスに口を付けるフリをした。  陽翔が酒の注文一つにどぎまぎしている間に、晶は順調に『仕事』を進めているようだった。
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