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晶が目を覚まして最初に見たものは、大きなシャンデリアだった。
(どこだココ、ラブホ……? の、割には安っぽくない……どっかのいいホテルのスイートとか?)
寝かされているのはやたら大きくてふかふかなベッドで、光沢のある柔らかなシーツは肌触りがよく快適だった。
(変な夢……いいホテルになんか、泊まったこともないのに……)
ぼうっとする頭で、何気なく身を起こそうとした。
(えっ……?)
頭の上で、チャラン、と金属が擦れ合う音がする。
手首が重くて、そして動かそうとすると何かが手首に食い込んで、夢の中とは違う感触にどきりとした。
「ぇ……あれ?」
「ああ、目が覚めたかな?」
耳慣れない、だが確かに聞いたことのある声がした。
誰の声だか分からないくせに背筋に冷たいものを感じる。
知りたくないような気持ちを押し殺してゆっくりと声のした方に顔を向けると、誰かがベッドの脇に腰を下ろした。
逆光で顔はよく見えない。
だが、酷く嫌なもののような気がした。
(誰だ――……?)
「ずっと眠っていて喉が渇いただろう。ほら」
ぐいっと顎を掴まれて、近付いてきた顔が押し当てられる。その柔らかな感触にぞわりとした。
「んっ! んんーっ……!」
冷たい舌が捻じ込まれ、飲みたくもない水が口移しで注ぎ込まれる。
無理矢理身体の中に入ってくる液体の感触に、嫌悪感で溺れそうになった。
「んぅっ……げほっ……!」
唇を離されて、口の中に残っていた水を吐き出す。
飲み込んでしまった分も胃液ごと吐き出してしまいたがったが、水分を欲していた身体がそれを許してくれなかった。
「なんだ、色気のない反応だなぁ」
晶に口移しで水を飲ませたその男が、嘲るような声を漏らす。晶の顔を覗き込むその顔は知っている。
「てめぇ……!」
(バーにいた、眼鏡の男……!)
ぼうっとしていた頭が、一気にクリアになった。
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