1 イケないお仕事

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 地下の店から階段で地上に上がる途中で(あきら)からメッセージが入る。 『出て左、二コ先の交差点』  『OK』のメッセージを返して、指示通りの交差点に向かった。  信号を一つ遣り過ごしたところで、大型のバイクが陽翔(はると)の前に滑り込んでくる。  メットからジャケット、パンツまで、全身黒ずくめのライダーは、バイクの大きさに比例して酷く小柄で、遠目で見たら誰も乗っていないのに走っているように見えるんじゃないか、と毎度のことながら少し可笑しくなった。 「馬鹿! ぼさっとしてねぇで早く乗れよ!」  フルフェイスのメットの下から、くぐもった声に怒鳴られる。  これも毎度のことだが、毎度のことながら一応陽翔(はると)も言い返した。 「僕が運転するよ。免許持ってるのは僕なんだから」 「お前の安全運転はだりぃんだよ! オレの単車だろ?」 「名義は僕だよ」 「金はオレが出したからオレのだ! ああもう、マジで早く乗れって! バレる前にずらかるぞ!」 「はいはい」  一応言ってはみたものの、(あきら)が絶対に折れないことは分かっている。  投げ渡されたハーフメットを被って、陽翔(はると)はバイクの後ろに跨った。  抱き締めるように掴まった(あきら)の身体は、目に見える以上にずっと華奢だ。 (ほんとは、もっと守ってあげたいのに……) 「飛ばすぞ! しっかり掴まってろよ!」 「……うん」  守られる必要などない、そう言うように、バイクは力強く夜の街を走り始めた。
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