1 イケないお仕事

7/8
前へ
/141ページ
次へ
「つー訳で、腹減ったから何か作って」 「こんな夜中に食べると太るよ」 「女じゃねぇんだからいいんだよ!」 「だからそういう意味じゃないってば……。ああもう、作るよ! 作るってば! オムライスでいい?」 「何でそんな女々しいチョイスなんだよ!」 「僕がオムライスの気分なの!」 「じゃあいい」 (結局オムライス好きなんじゃん……)  『女扱い』ではないと聞くと(あきら)はあっさりと引き下がって、陽翔(はると)が丁寧に乾かしたさらさらの髪をまた無造作に頭の上でまとめた。  正直、(あきら)がいくら抗ったところで、美少女が彼氏のTシャツを着てラフなスタイルで寛いでいるようにしか見えないのだが、言ったところで(あきら)の機嫌が悪くなるだけだ。 ((あきら)のやりたいようにすればいいよ。どうせ僕は、(あきら)についていくだけだから――)  1Kのボロアパート、その狭いキッチンに立って、陽翔(はると)は慣れた手つきでオムライスを作り始めた。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1094人が本棚に入れています
本棚に追加