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「あー美味かったー!」
陽翔が作ったオムライスを平らげた晶は、満足気に陽翔が敷いた布団に横になった。
皿を洗う陽翔を後目に、「おやすみー」ととっとと目を閉じてしまう。
「こら、歯ぐらい磨けってば、晶!」
キッチンから声をかけるも、晶は無視を決め込んで陽翔に背を向けてしまった。
「晶!」
絶対にまだ眠っていないくせに晶は返事をしない。
「ああ、もう……」
皿を洗い、歯も磨き終えた陽翔がやってきて、晶の顔を覗き込む。
絶対に眠っていない晶は、目を閉じたまま子供の笑みを浮かべていた。
「ほんと仕方ないんだから……。おやすみ、晶」
肩まで布団をかけ直してやって、陽翔も自分の布団に潜り込んだ。
晶は昔からずっとこんな感じだ。
陽翔と児童養護施設で出会った八年前からずっと。
女みたいな自分の容姿が嫌いで、自分なんてどうなってもいいって本気で思ってて、だからつい陽翔は過剰に世話を焼いてしまう。
暗闇の中、晶がそっと起き上る気配がする。
暫く様子を窺って、陽翔が起きないことを確認すると、晶は陽翔の布団の中に潜り込んできた。
(あ、来た……)
人肌恋しくなるとこっそり布団に潜り込んで来るくせも昔のままだ。
正直、十八の男子がする行動ではないと思うけれど、赤ん坊のころから施設で育った晶には、こんな風に甘えられる相手は他にいないのだろう。
(僕は十歳まで思い切り親に甘えたから……)
だからこんな木偶の坊でも、晶の役に立つのなら嬉しい――。
そんな気持ちで、陽翔は今日も寝たふりを続けた。
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