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注文の多い料理店にいる記憶力の悪いウェイトレス
休日の朝、のっそりと起き出して「中身の乏しい冷蔵庫」を確認した「思い込みの激しい悦郎」は、とりあえず遅めの朝食をとるため、駅の向こうにある「注文の多い料理店」の「シェフの気まぐれが激しいランチ」をいただきに向かうことにした。
しかしいざ「遮断機の鋭利な踏切」を渡り、「注文の多い料理店」があるはずの一角へとたどり着いてみると、何度か訪れたことのある「注文の多い料理店」はどこにも見当たらなかった。「思い込みの激しい悦郎」は、どうやら勝手に店の場所を駅の向こうにあると思い込んでいたのである。
賢明にもそのことに気づいた「思い込みの激しい悦郎」は、再び「遮断機の鋭利な踏切」をスレスレのところで渡り、15分ほどウロウロするうちに、「注文の多い料理店」を「まったく見覚えのない場所」に発見した。店頭に立てかけてある「もの凄く字の汚い黒板」に見覚えがあった。
「思い込みの激しい悦郎」が店内に入ると、「挨拶の大きいウェイター」が「いらっしゃいませ!」と声高に叫び、「思い込みの激しい悦郎」はやはり不必要な大音声で案内されたテーブル席に着席した。
しばらくすると「記憶力の悪いウェイトレス」が「出どころのわからない水」と「紙質の悪いメニュー」を持って来て、「ご注文よろしいですか?」と訊いてきた。「思い込みの激しい悦郎」は、「シェフの気まぐれが激しいランチ」と「豆の苦すぎるコーヒー」を頼んだ。
十五分ほど待っても料理が来ないのでおかしいなと思っていると、「記憶力の悪いウェイトレス」が再び「思い込みの激しい悦郎」の席へと手ぶらで近づいてきて、「ご注文よろしいですか?」と初めて注文を訊きにきた感じで再度訊ねてきた。
「思い込みの激しい悦郎」は、不満ながらも「もしかしたらまた自分が、すでに注文したと思い込んでいるだけかも」との考えが頭をよぎり、もう一度「シェフの気まぐれが激しいランチ」と「豆の苦すぎるコーヒー」を注文した。
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