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なんば、関西空港、そして終着駅。
「昔、あそこに球場がね。」
17:00発のラピートβ。車窓からの「なんばパークス」。「なんば」からの南海電車で見える光景のうち、つい、感慨を伴い見てしまう。
「プロ野球の?」
「そう、南海ホークスの。」
だが、それが現在のソフトバンクであるのを知らないのはまだしも、パ・リーグのチームだというのも知らない有様だった。
ホークスが福岡に移ってからもスタジアムはしばらくは残されていた。高校野球の予選で一度来たことがあった。それにしても、電車で通るたびにここに大阪球場があったんだと、南海ホークスのファンでもないのに想うとは。
だが、ここでは、彼女と過ごせることに意味を持たせないといけない。この関西空港駅までの四十分間。でも、何を話せばいい。ふと、よぎる。彼女の住まいで、一緒にヴァイオリンを練習したことが。二人だけの空間。まさに、それだけに…。でも、虚ろな感はなかった。ただ、実態に乏しい表象ととらえた方が、心持ちとしてしっくりいった。
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