第七章 銀色 二

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 そこで、疲れた体を志摩に任せたまま、上を見ていると、あれこれ世界が見えていた。  五十鈴は薬局でバイトをしていて、商店街はまだ閑散としていた。そこに、日本刀通り魔事件犯と名前を付けられた写真が配られていた。その彼女は、次にニュースで駅のホームの下で、自害している遺体が見つかったと報道されていた。遺書があり、犯されたので辛かったと綴られていた。  この事件は、犯人が死亡となり終了であろう。目撃者が多くいるので、犯人は彼女で間違いはない。でも、殺しに発展するまので、彼女の苦悩は誰も分かろうとはしない。 「志摩、面白くないと誰も興味を持たないものかな……」  人の場合は、こうして男同士でも肉体関係を持つように、既に性欲が娯楽であり快楽であった。もう、子孫繁栄のために、行為をしているのではない。 「事件ですか。彼女の過去や、あの教祖の過去などが、面白がって報道されていますね」  被害者は面白がれないが、加害者には容赦がない。そこでゆくと、社会に訴えるには、加害者で派手なほうがいいとなってしまう。 「まあ、この事件の場合は、被害者は事故にも近いね……」  ただの通りすがりという人も多い。 「しかし、何故、日本刀であったかな……」 「家に飾ってあったようです」  でも、普通は日本刀を飾っていても、切れるようにはしていないだろう。摸擬刀のように、刃を潰してあるのかと思っていた。 「しかし、八重樫さんの闇も、狂気というのか凶器なのですね」  志摩も、彼女の闇に気付いていたようだ。×は殺しの衝動を持ち、闇を欲する。それが異常ではなく、×はそれが正常なのだ。  そこで、今度は八重樫のアパートが取り壊しで悩んでしまう。ここに同居したいと言ってくるのは明白だが、八重樫は小田桐とアレをするのだ。それには、耐えられそうにもない。 「事故物件を見て来よう」  今回の事故物件は、問題は騒音なのであろうか、行って確認しておきたい。 「志摩、バイトだね。出るよ」  体も復帰してきた。どうにかバイトに行けるだろう。
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