第十二章 機械が笑う時 二

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 名家の出身ではない守人様は、保護が充分ではないせいもあって、長く生きていない者もいる。名家でも短命がいるくらいなので、政治的な面もあるのであろう。 「村も守人様が出ていってしまわれたので、あれこれ変わろうとはしているけどね……」  俺も、あれこれ考えてしまい、山を買って住もうとはしている。 「定食をお願いします」  声のした方を見ると客が来ていたので、俺は急いで定食を造り始める。今日は、志摩も大人しい。 「守人さん、やはり護衛は必要でしょう……」 「大丈夫だよ、志摩。心配かけてごめんね」   今回は、光二が尾行されていて、つい逆上してしまった。でも、話をすれば分かり合える面もある。  それと、気になるのは谷津であった。谷津は俺にコメントしながらも、光二がマークされていることも、五十鈴に追跡が付いていることも教えようとしなかった。  やはり、谷津も金目当てでゲームをしているのだろう。俺が、ゲームを消そうとすると、谷津のコメントが入っていた。 『これ万能ではないのよ。それに俺は、上月だけを見ているしね』  言い訳のようだが、このゲームは既に谷津の手を離れて、独り歩きしているという。そもそもが、個々が技能を持ち寄って開発してきたものなので、もう谷津でも制御は出来ないらしい。 『上月は覚えていないだろうけどさ、俺を救ったのは上月と光二だった。それから、絶対に役に立ちたいって思っていた。だから、信じて欲しい』  谷津を助けた覚えはないが、物理的に助けたというものではないらしい。谷津は頭脳がいいが、運動能力は完全では無かった。左手か右手の指が、何本か動かなかったように思う。  そこで、谷津自身も、自分はきっと生贄で死ぬと確信していたらしい。それを聞いた俺達は、足の指が動くのか確認しに行った。 『何故、足の指と思ったけどさ……』  すると、俺は足の指が動くならばいいと、笑顔で言ったという。 「何がいいのだろ?」  俺も、自分の言った台詞が意味不明であった。  しかし、谷津はそうか足の指も使うかと、パソコンのキーボードの補助機能として、足を使用するようになった。使用する頻度の高いキーを足でも押せるようにして、動かない指を補助しているらしい。 『俺は左右三本ずつしか指が動きません。小指と薬指は飾りです』  それなのに、パソコンのキーボードは自在に入力している。
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