第十二章 機械が笑う時 二

6/9
前へ
/186ページ
次へ
 ふと携帯電話の画面を見ると、ゲームの画面が立ち上がっていた。そして、事件発生の発信が俺の携帯電話からされていた。 「谷津、どういうこと?」 『守人様に危害を加えようとしている奴だろ。危険だからね。追跡しようと発信しておいた』  危害を加えようとしていたのかは分からない。俺は、腕を掴まれただけだ。しかし、映像を再生してみると、俺の知らない所であれこれ展開されていた。  まず、駅員が近寄った、その前の瞬間に、電車の中に知らない男が増えている。そして、駅員が腕を引いた所で、男が短刀で腕を切り裂いていた。そして、叫びで皆の視線が腕に移動した隙に、腕から血を流す男の首も切り落し、空中に消えていた。残った身体は、水のように流れて、床に広がっていた。  その一連の作業が、一秒ほどの出来事であった。誰も、一人増えて、二人消えたなど気付いていなかったであろう。  しかし、体が水になったのに、どうして腕は残ったのであろう。 「水……どっちの能力なの?」  すると、画面に文字が浮かんでいた。 『三人目の能力だよ』  水になった男の後ろにも、もう一人いたらしい。  この場合は、誰を追跡しているのであろう。画面を見ると、様々な者を追っていた。  講義室に入り、いつもの席に座ると、皆が遅れて着席していた。五十鈴も走ってやってくる。 「又、駅で変な事件があってさ」  切られた腕だけが残っていて、本体が見つからないと言っていた。  しかも続きがあり、その腕を持っていた駅員が、その後、線路に落ちたらしい。それも腕を持ったまま落ち、立ち上がった時には持っていた腕が無くなっていて、総出で探していた。 「ここの所、変な事件ばかりだね」  講師がやってきたので、出席の返事をする。確かに、ここの所、変な事件ばかりに遭遇している。やはり、柴崎の×が逃亡しているのが関係しているのだろう。   俺の首を五十鈴が凝視していたので、手を当ててみると傷跡があった。俺は、傷が消えているのか確認してくるのを忘れていた。 「首、アレルギーかな?赤くなっているよ」  紐状に赤くなっていると、五十鈴が指摘していた。どうにか傷は塞がっているらしい。  講義が始まると、隠れて大慈がノートを取っていた。やはり、大慈がいると、別の事に集中してしまう。敵か味方なのか分からないが、谷津は携帯電話を通して俺を見ている。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加