第二章 雪みたいに花みたいに 二

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 代わりに小田桐が、しきりに謝っていた。 「建翔様は、あれで、必死に家の為、村の為を思っているのですよ」  でも、小田桐は八重樫の女性化を認めていた。しかし小田桐は、これではいけないと思いつつも、つい甘やかしてしまうらしい。 「分かっているのですよ。男らしいというのは、教育でそうなります。自然になるものではなく、周囲からの期待ですよね」  小田桐は、自分が八重樫を恋人のように扱ってしまうので、女性的になってきたと考えていた。 「違いますよ、小田桐さん。共に戦わないからですよ」  小田桐は、八重樫の直面している医者になる難関というものの手助けができない。八重樫は、小田桐と共に戦える術を持たない。だから、異種混合?の恋人というもので繋がろうとする。 「八重樫、俺を食わしてゆくのではないの?」 「そうだよ。一生、食わしていってやる」  八重樫は、八重樫なので、見守っているしかない。  俺は志摩を部屋に運ぶと、光二にチェンジしてみた。しかし、光二は、氷渡の横にある部屋には行こうとせずに、小田桐の話を聞いていた。光二が来ないので、心配して来た氷渡も混じり、再び車のホラーで盛り上がる。 「部屋の前に車があるでしょ。すると、人影が窓にあるのですよ。でも、窓を開けても誰もいない」  小田桐も駐車場を利用していて、朝の出勤の時にも人影を見るという。  車の持ち主は、どうも惣菜店の店員らしい。早朝に出勤し仕入を行うと、下準備をして一旦帰る。そして、昼から出勤すると、夕方まで働く。店員は若いが、不規則な生活のせいなのか、かなり疲れているように見えるらしい。 「彼女がいないので、無事なのか……」  そんな不規則で疲れていたら、彼女はできないのではないのか。 「そうかもしれませんね」  でも、そこで小田桐が笑っていた。 「何か可笑しい?」 「いや、無事の根拠は考えていなかったなと……では、建翔様が乗っていたならば、一生無事ですね」  しかし、人の思念だけで、人を殺せるものなのであろうか。 「もしかして……車の中で生きているのかもしれませんね」  俺は光二の中で話を聞いていた。車という機械の中では、×も生きてはいられない。でも、俺が光という物質の何かにリンクしているように、車にリンクしてしまっている人がいるのかもしれない。 「光二さん、守人様は中ですね。まあ、車を見に来てください」
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