第二章 雪みたいに花みたいに 二

4/9
前へ
/186ページ
次へ
 俺に出来る事はないが、見に行くくらいはいいだろう。 「小田桐さん、俺は向こうの自分の部屋に行きますが、ここはリビングなので、ここではしないでくださいね」  光二が立ち上がると、氷渡も立ち上がる。小田桐は頷いているが、どうにも信用できない。 「ここは、共有スペースですからね。ここで、していたら、二度と部屋には入れません!」  光二が捨て台詞を吐いて部屋を出た。  今日は台風のせいで、光二も仕事が休みになっていた。客商売なので、人が来なければ営業できない。  ドアの外に出ると風が強く、傘を差していても、意味をなさない。屋上は遮る建物がないせいなのか、光二まで飛ばされそうになっていた。横殴りの雨で、傘を閉じると更に強い風が当たった。氷渡は、さりげなく光二をエスコートしているが、やはり一緒にびしょ濡れになっていた。 「……植木、飛びそうだね……」  飛ばない様に設計されている筈だが、かなり激しく揺れていた。  屋上庭園を突っ切ると、通路にセキュリティーがある。一般の客が、氷渡の家に入らないようにしているのだ。セキュリティーは玄関にもあり、今度は網膜をチェックしていた。  やっと部屋に入ったが、服が絞れる程濡れていて、風呂場へと直行していた。 『ええと、光二、俺は眠っておくね』  二人で風呂に入るならば、俺は見ない方がいい。 「そうか。ごめんね」  光二の心臓の辺りに移動すると、眠ろうとする。しかし、先客がいた。  蛇が俺の寝床を占領している。この蛇は、光二を修復するために寄生している生物であるが、かなり大きい。俺が光二の中で小さいせいもあるが、俺の身長の三倍はある。細いのだが、とぐろを巻いていると、俺の寝床を占領するほどであった。  俺が別の場所を探そうとすると、今度はオウムが歩いていた。このオウムも寄生生物で、光二の闇を貯蔵している。  オウムに隠れていると、蛇も一緒に隠れていた。この寝床は、オウムが入って来られない、微妙な大きさになっているらしい。ここのオウムも、俺よりも巨大であった。  オウムは蛇がお気に入りで、見つけると突いたり噛んだりして楽しんでいる。しかし、蛇にとっては、かなり迷惑な行為だ。だから蛇は、オウムに見つからない様に隠れているのであろう。  寝床から去ろうとすると、蛇が尻尾で俺の胴を掴んだ。そして、寝床に引き摺り込む。 『一緒に寝ようということか……』
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加