第二章 雪みたいに花みたいに 二

5/9
前へ
/186ページ
次へ
 蛇が俺を見ると、自分の上に乗せていた。俺は蛇の胴を枕にすると、やはり胴に抱き付いて眠ってしまった。  目覚めると目の前に蛇がいて、思わず叫びそうになった。しかし、光二の心臓で眠っていた事を思い出す。いつも、目覚めると切り代わっていたので、心臓で目を覚ますなど滅多にない。  時計を見ると早朝であったので、まだ切り替わっていないのかもしれない。しかし、外を見て俺は再び叫びそうになってしまった。  今度は目の前で眠っていたのは、氷渡であった。ここは、氷渡のベッドなのかもしれない。 『光二、鍋の片付けがあるから家に帰りたいのだけれど』 「ごめん。眠ってしまった……」  光二は裸で起き上がると、シャワーを浴びて服を着込んだ。 「ほら、夜通しできるなんて滅多にないからさ」  氷渡も裸で、少し光二が照れている。  光二と氷渡は恋人同士なので、裸でもいいのだが、俺が見てはいけないものだろう。兄弟でも、プライバシーが必要だ。  そのまま氷渡の家を出て、通路に行くと台風が去っていた。俺は光二と入れ替わると、まだ残っていた月を見上げた。 「台風去って晴れかな?」  しかし例え晴でも、壊れたものは治らない。見回すと、屋上庭園が荒れていた。ここの手入れもしなくてはいけない。 「まあ、家に帰ろう」  しかし、そっと部屋の中の様子を伺いながら、自分の家に入ってみる。ここで、小田桐と八重樫がしていたら、俺は泣きたい気分だ。 「お、並んで眠っている」  小田桐と八重樫は、布団で並んで眠っていた。  俺は空いている鍋を重ねると、喫茶店ひまわりに運んでおく。中身のあるものは、皿に移しラップをかけておいた。皆、大食いなのでそんなに余ってはいない。  鍋を運び終ると、志摩の手が伸びてきて、俺の腕を掴んでいた。 「守人さん、私も連れて行ってください」  志摩は、自分で移動する事ができない。俺は、部屋に行くと、志摩の箪笥を背負って歩き出す。 「志摩、洗い物は直ぐに終わるだろう?庭園を直して欲しいけど」 「分かりました。守人さん」  志摩は鍋を洗うと、手を伸ばして庭園に行き、倒れた木などを元通りにしていた。散った葉も、全部食べて処分している。  俺は米を砥ぐと、炊飯をセットしておく。すると、多美がやってきて、凄いスピードで料理を始めていた。 「昨日は台風で客足が無かったね。損失が出たかい?」 「はい」
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加