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損失は出たが、これは商売をしていれば覚悟をしなくてはならないものだ。それでも、多美は気候を読んで、少な目に料理をしていた。
ここで焦って挽回しようとするよりも、確実に仕事をこなした方がいい。
「志摩、モーニングの時間だよ」
電車が止まったせいなのか、カプセルホテルの客が多かった。トレーを用意すると、素早く器をセットしてゆく。始発で帰る人もいるのか、皆、急いでいた。
「ご飯、切れます」
予想よりも宿泊が多かった。次の炊飯は用意してあったが、これでは一般客でご飯が切れる。次の炊飯を開始すると、まだモーニングの列が続いていた。
「こんなに部屋数は、多かったっけ?」
「満室と聞いています」
多美の用意した惣菜も切れそうになっている。そこで、いつもならばパンを出すのだが、今日はパン屋も仕込みが遅かった。昨日の夜に準備が出来なかったらしい。
もうダメかと思ったが、冷凍のうどんがあった事を思い出した。そこで、鴨南蛮うどんと。カレーうどんを作ってみた。
「どうにか、乗り切った……」
予備の食材も必要なのかもしれない。俺は冷蔵庫を確認すると、補充をしておく。
そこでモーニングが終了すると、多美が俺に弁当を持たせてくれた。
「ほら。疲れた顔をしない」
まだ温かいが、何が入っているのであろうか。
俺は、李下がやって来たので店を出ると、大学へと向かった。
大学の講義室の、いつもの席に座ると、五十鈴が走ってやって来た。
「上月、この事件を知っている?」
五十鈴は、地元の出身で、この土地に詳しい。五十鈴に地図を見せられたが、俺には場所が分からなかった。
「これは、どこ?」
「これさ、朱火駅の、上月の住んでいる方の出入り口とは逆の方ね」
逆には、あまり行かないので、道がよく分からない。すると、手書きでも地図を描いてくれた。それは、喫茶店ひまわりから説明されているので、位置関係が分かり易い。
「ここでさ、交通事故があった。ここの医学部の学生が、彼女を送って行った時に、居眠り運転のトラックに突っ込まれた」
それは、昨日、八重樫からも聞いた気がする。
「彼女は死んで、運転手は軽傷だった」
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