第二章 雪みたいに花みたいに 二

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 講義が始まったが、話が気になって集中できない。でも、俺には強い味方の、大慈がいる。大慈は、小さなミイラで、記憶を伝えられる能力がある。大慈が授業を必死に聞いているので、後で記憶を貰っておこう。大慈のお陰で、俺はかなり成績が良くなった。  この車は、運転手を守るのだ。だが、助手席は守らない。  助手席を無視したとして、トラックが突っ込んで来る、急発進で逃れるという咄嗟の判断をするのは、自分も運転していた事があるということだ。普通だったら、怖くてできない。  この車の操作に慣れているということは、元、この車を乗っていたということになる。  そこで、慧一にこの車種の事故記録を全部集めて貰った。そこで、死亡事故になったものだけを抜き出してみた。  それを更に年齢で絞ってみる。  すると、一件、気になる事故があった。居眠り運転で、民家の生垣に突っ込み、生垣が大きく、しかも。しなったために、車は二階へと走り込んだ。二階の屋根を走り、車は民家の二階に突っ込んだ。  二階にいたのはその家の息子のはずだったが、その日は飲みに行っていて留守にしていた。  突っ込んだ車は、その家の息子のものであった。飲んだので代行を頼もうとしたが、予約が一杯だったために、友人に車を頼んだらしい。その友人は飲んでいなかったので、車で自分の家に戻り、明日、持ち主を拾って一緒に会社に行く予定であった。  別の友人に送られて家に到着した彼は、変わり果てた友人を見た。どうして、自分の家の前を通ったのか真相は分からない。本来は、通る道では無かったのだ。  この持ち主は、新車でこの車を購入し、そして売却していた。この時の、運転していた友人を失いたくなかった、次は守ろうという気持ちが、この車には残っている。  この車は、人気の車種であったが故に、廃車になれずにいる。あれこれを継承してしまい、普通の人では運転できなくなってしまった。  講義が終わると、心配そうに大慈が俺を見上げていた。俺は、かなり顔色が悪くなっているらしい。 「上月、ごめんな。怖い話を聞かせたせいか?」  五十鈴が、心配して俺の顔を覗き込んでいた。 「いや、平気。学食に行こうか」 「食い気があれば大丈夫か」  学食に行き、多美の造った弁当を開いてみるとかつサンドであった。しかも、かつカレーサンドと、ソースカツサンドの両方が入っている。 「その弁当、美味そう」
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