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定食を持ってきた五十鈴が、俺の弁当を凝視しているので、取り替えてみた。
「いいの?」
「いいよ。俺は、家で食べられるから」
定食も美味しい。それに温かい。
「美味しい!」
五十鈴の叫びに人も寄ってきて、カツサンドは、あっという間に消えてしまっていた。
「定食は返さないよ」
「いいよ。上月、あのサンド、又、持ってきてね」
そこで、五十鈴は、どうして事故の件を俺に教えたのか説明してくれた。
「事故の起きた土地は、又、事故が起きたりするでしょ。上月には、そういう土地に近寄って欲しくないよね。少し、怖がらせようと思ってさ」
「そうだよね。俺も思うよ」
それと、五十鈴は居酒屋でバイトをしているが、あれこれ噂を聞くのだそうだ。喫茶店ひまわりの噂もあり、内容はともかく、何故か皆に定食屋と呼ばれているらしい。
「居酒屋もさ、コンビニの事件で客が少なくなって、店員が次々と辞めてゆく」
やはり、系列として一緒なので、殺人事件と重ねて見られてしまう。
「それに俺の両親もさ、居酒屋を辞めてと言ってきた。何か不安なんだって」
そこで、修行も兼ねて大手チェーン店の薬局でバイトをしろと言われているらしい。五十鈴も、半ば面接に行こうとしていた。
人の、何となく不安であるという感情は、どうにもならない。大事な跡取り息子で、変な人がいるかもしれないバイトをさせたくないのだろう。
「……親の言う事も確かだよね」
親の方が長く生きているので、様々な失敗を見ている。親の言いなりで、失敗しない人生をしてきた者は潰しがきかないが、忠告を無視するというのも勿体ない。
「そうだよね……転職するか……」
そこで、紹介されたという薬局を聞くと、八重樫のアパートの近くであった。確かに商店街に、チェーン店の薬局があった。
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