第四章 雪みたいに花みたいに 四

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 すると、廃車がいいのかとの問いが画面に出ていた。画面には。イエスとノーの回答ボタンもついている。ヤツヒロとあるので、谷津からのメッセージかもしれない。俺がイエスと押すと、笑顔のマークが出ていた。  そういえば、谷津を思い出すと、いつも笑っていた。作り笑いというのではなく、笑い上戸であったらしい。先生の顔が面白いと笑い、よく注意されていた気がする。 「あ、レッカー車が事故だ……」  追跡をかけていた、旗幟の画面に、ガードレールから斜面に落ちている青い車が見えた。遡って確認すると、自転車が飛び出し、レッカー車が急ハンドルを切り後部がガードレールに接触、そのまま落ちたらしい。 「偶然なのかな?」  廃車にしたいと願ったが、この事故は谷津の計算なのであろうか、それとも偶然なのであろうか。  しかも、ただ落ちただけであるのに、車が燃えていた。コメントが幾つも入っていて、落ちた際にタンクを破損したのか、液体が下に流れていたとあった。そこに、接触による火花で着火したらしい。  燃えてしまっては、確かに廃車にするしかないであろう。  燃えている車の横で、女性の影が浮いていた。拠り所を無くせば、影だけでは存在できないだろう。炎に燃やされるように、消えてゆこうとしていた。  でも、これで車は消えた。  改めて八重樫が心配で見ようとすると、先ほど警告を受けていたせいなのか、制限がかかっていた。 「八重樫の部屋は十八禁か?」 「いや、これは、宗教団体が出入りする人を見せたくなくて、制限を要請しているようです」  旗幟は、ゲームで仲間を作っていて、情報のやりとりをしていた。 「こういう場合は、制限の入っていないカメラを捜します」  そこで、旗幟は惣菜屋の防犯カメラからアパートを見ていた。 「なるほど……」  俺が結界を張ってしまったので、無事を確認できればいい。映像を見ると静かであったので、そこで満足しておく。 「もしかして、俺のプライバシーなんかもなしかな?」 「それは、上月は守人様でしょ。安全制限というやつで、監視や追跡などできないようになっている。要は誘拐などの犯罪に使用しないように、使用制限がある」  他に、暗殺部隊や征伐部隊も、ゲームで監視、追跡できないようになっていた。 「適当にルールはあるわけか」  でも、危険なゲームのような気がする。
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