46人が本棚に入れています
本棚に追加
少し気になってしまい、谷津に連絡を取ろうとしたが、電話番号も何も知らなかった。谷津とは、家が二軒隣であったので行った方が早く、電話などで連絡を取ろうと思った事が無かった。
バイトが終わり、光二に切り替わる僅かな時間に、李下の部屋を訪ねてみた。李下は、公務員の仕事をしていたようで、机の上は書類が散乱していた。その書類も、見てはいけないものが多いらしく、李下が困ったように裏返していた。
「上月、どうしたの?」
「少し、相談したい事があります」
李下が、部屋から出てくると俺にお茶をいれてくれた。これは、村の茶で、普通の人が飲むと幻覚を見ると言うが、村の住人には普通のお茶であった。
李下はカウンターの席に座ると、俺を見ていた。俺もカウンター席に座ると、李下の方を向く。
「谷津のゲームを知っていますよね?谷津に連絡を取りたいのですけど」
そこで、李下はお茶を飲み切ると、目を逸らした。何か、谷津にあったのかもしれない。
「……谷津は知っている。ゲームも知っているけど、連絡方法は知らない」
李下は、暗殺部隊でもあり、又公務員でもあるので、このゲームには登録できないらしい。李下は、掟を破らない限りマークはしないが、谷津はマークしているという。
「あのゲームは危険でしょう?とくに、こちらの世界にも影響が大きい」
何かを察したかのように、谷津の家は突然空き地になったという。
「空き地なのですか?空き家ではなくて」
「そうだよ。一晩で家が消えて、空き地になっていたと近隣の家が言っていた」
それも、夜中に物音もせずに、家、塀、物置など全てが消えていた。村には特殊な×もいるので、そんなには驚かないが、何も言わずに去ったという事が気になるという。
「地区の集会のお知らせもあって、隣の家と雑草駆除の相談をしていたとか。犬の予防接種の予約をしていたとか。去る気配が全くなくて、理由もなかった」
そこで、慧一に問い合わせてみると、確かに谷津の家は無くなっていた。
ゲームの件で谷津はマークされていたのかもしれないが、家族まで消える理由にはならない。そこまで、深刻にはなっていない筈だ。
「どこに行ったのだろう?」
そこで、李下にどうして谷津に連絡をしたいのか、逆に聞かれてしまった。
「やはり、ゲームですよ。これは、残酷のような気がして……」
最初のコメントを投稿しよう!