第五章 雪のように花のように 五

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 そこで、説明しようと画面を見せると、八重樫の家の横にある監視カメラに接続したままであった。映像の中は、玄関の光で、やや周囲は明るい。するとそこに、長い棒を持った人影があった。 「何を持っているのだろ」  画面を凝視して見ると、このシルエットは女性で、日本刀を手にしていた。 「包丁とかではなくて、日本刀?」  しかも、既に鞘から刀身が抜かれている。 「あ、これ、どうやって操作するのだろ」  俺が慌てていると、李下が小田桐に電話をしていた。 「アパートの前に、刃物を持った女性がいます。八重樫殿をお守りして、外に出ない様にしてください」  俺は、どう操作するのか分からず、発信ボタンを押していたらしい。すると、次第に傍観者の数が増えてきていた。 「しまった。これ、こちらの世界の人も多く見ているということは、×の能力を使用できないのか……」 「ドアを開けなければ、そう心配はないですよ」  しかし、何故、日本刀なのであろう。他のカメラを探すと、アパートの防犯カメラがあった。そのカメラに切り替えると、女性の顔が浮かんでいた。  若い女性で、短い髪と大きな目で、可愛い感じであった。女性は、しっかりと化粧していて、爪にはキラキラとした石がついていた。でも、清楚な感じがして、普通のOLという感じがする。その普通さと、日本刀がアンバランスでどこか狂気を帯びていた。  薄いミント色のタンクトップに、同色のカーディガンを羽織っている。そして、耳には金色のピアスがあった。履いているズボンは淡い白で、靴は銀色であった。どこかにショッピングか食事でも行くような恰好で、手には日本刀を持っている。 「八重樫の家の前を過ぎた……」  では、隣の部屋がターゲットなのであろうか。  李下が着替えてくると、黒一色の服装になり、手に手袋をはめていた。八重樫を守った状態では、小田桐は部屋を離れられない。李下は、何かあった場合の応援に行こうとしているようだ。 「俺も行きます」 「上月は、もうすぐ光二君にチェンジでしょう」  でも、結界が原因だとしたら、きっかけを作ったのは俺であった。 「光二の服に着替えて、現場で現状を確認後にチェンジします」  急いで俺も着替えると、李下と一緒に非情階段を降りた。
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