第六章 銀色

2/8
前へ
/186ページ
次へ
 目が覚めると志摩の手の中で、時計を見るとまだ早かった。再び眠ろうとしたが、志摩の指が動いていた。 「どうしたの、志摩?」  志摩の指に触れると、他にも伸びていた手が携帯電話を落した。 「これ、光二さんが持っていろと渡してゆきました……」  画面には、誰もいないホームが映っていた。まだ、始発の時間にも早いらしい。ホームには電気もついていないが、薄っすらと夜明けになってきた。明るくなってくると、あちこちにテープが貼られている事に気付く。これは、現場検証の跡なのであろうか。 「彼女は捕まったのかな……」 「いいえ。逃げています」  周囲を警官に囲まれていた気がするが、その状況で逃げているのか。志摩がテレビをつけると、まだニュース番組が始まっていなかった。しかし、情報の検索は出来るので、地名と事件で検索してみた。 「八人死亡……」  凄い事件になってしまっている。日本で、八人も殺した女性がいたであろうか。日本の女性は、怨恨か恋愛、それと無理心中でしか殺さないのかと思っていた。俺も近くで見たが、あれは怨恨から始まったのであろうか。しかし、ホームで殺された人は、無関係であった。 「それで、八重樫さんがリビングにいます。部屋が使用できないのだそうです」  八重樫の隣の部屋で、六人が死亡していた。報道陣や警察が押し寄せ、部屋にいられないような状況になっているらしい。  俺は、志摩の携帯電話を操作する女性のような細い手を引き寄せると、一緒に画面を見る。こんな怖いゲームではなく、綺麗な画像が見たかった。 「志摩、他の映像はないの?」  でも、志摩は誰もいないホームを見続けていた。そこに何があるのであろうか。 「志摩?」  そこで俺も画面をじっくり見てしまった。教祖は駅に逃げ、ホームに入って行った。ホームは行き止まりに近く、線路に降りなければ逃げ場がない。でも、遺体は若い男女のみで、教祖はいなかった。  確かに、ホームから教祖の姿が消えていたら、可能性は何かと考えるだろう。ひとつの可能性としては、売店があるので、中に隠れる。しかし、それは彼女も考えたようで、売店の女性が怪我をしていた。店の中を確認したのであろう。  他に、ホームの下に隠れるなどがあるが、それも確認したようで、彼女の位置はホームに設置された監視モニターの前であった。
/186ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加