第六章 銀色

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 もう一つあり、それは李下が助けたであった。ただ助けたのではない、彼女が教祖を追って、村に来るように仕向けるだろう。  ×の存在は、こちらの世界では一部にしか知られていない。遺伝子が人間のものとは異なるので、変に死体を解剖されたくはない。だから暴走した×は、村で捕まえ、限りなく遺伝子が人の者を用意するしかない。もしくは、解剖してもバレない死体を用意する。  すると、画面の中で李下が柱から姿を現した。次に教祖が現れる。 「あ、志摩は見張りを頼まれていたのか」  李下は気配を消すだけで、姿を見えなくする事ができる。じっと、誰もいなくなるのを待っていたのであろう。 「はい。監視カメラは慧一さんが操作しています」  李下は線路に降りると、教祖を連れて歩いていた。 「このゲームを開いているということは、彼女はこの映像を追って来るということか……」  そこで、志摩が頷いていた。  しかし、画面の景色を見ていると、どんどんここに近付いてくる。 「……ここから、村に連れてゆくのか……」 「そうです」  普通の人が、村の闇に耐えられるだろうか。 「……喫茶店ひまわり。開店準備を始めるけど」 「危険ですね!」  志摩が明るく答えてくれた。  日本刀には慣れているが、それでも、喫茶店ひまわりで事件を起こしたくない。最近まで喫茶店ひまわりは、霊現象が出る店として有名で、誰も客が来なかった。やっと、客が来るようになったので、又事件で悪い噂が流れるのは困る。 「ここに現れたら、村に強制送還?しよう」  事件を起こす前に、村に送ってしまえばいいのだ。  志摩を背負い、喫茶店ひまわりに行こうとしたが、その前に村と繋がる木を確認してしまった。ここを、どのように通そうか考えてしまう。 「村に……落とせないよね」 「でも、私の箪笥は村のものなので、落ちるようですよ」  志摩は試した事はないが、俺が背負っている時に何度か落ちそうになったという。 「……そうか」  志摩の箪笥は、丈夫に出来ているうえに、補強もしている。落ちても箪笥は壊れないだろうが、志摩は大丈夫なのであろうか。 「志摩は、落ちたら死ぬよね?」 「……結構、守人さんはあちこちで落としていますよ」  それは、昔は志摩と遊んでいるつもりで、滝から落としたり、木から飛び降りたりしていた。悪気があって落としたのではない。 「そうか……志摩も丈夫だね」
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