第六章 銀色

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 そこで、志摩があれこれ言っていたが、聞き流すと厨房に入る。厨房では、多美が既に来ていて、エビフライを作っていた。 「揚げ物ですか?」  多美は煮物を得意として、揚げ物はトンカツしか見た事が無かった。 「エビが大量にあったのでね」  では、慧一が食べたくて注文しているのであろう。 「タルタルソースも欲しいですね。作っておきます」  多美は煮物も美味しいが、漬物もおいしい。俺が定食に添える漬物を刻んでいると、李下が廊下を過ぎて行った。 「李下さん」  李下は教祖を連れていて、周囲を確認しながら進んでいた。では、まだ彼女の位置は確認できていないのであろう。しかし、ここで立ち止まるのは危険であった。俺は、ここの防犯カメラの位置を確認する。  俺がカメラの前で唯我独尊闇切丸や、白光丸などを出したら、銃刀法違反になってしまいそうだ。 「カメラはどこだ?」  すると、携帯の画面に文字が浮かんでいた。 『守人様の姿を映す事は、掟破りだと脅されたよ。だから、自由に刀を出していい。俺が消しておく』  しかし、俺の刀を消すだけでは、李下が戦闘できない。 「この屋上を映さないでよ」 『しょうがない、了解してやる』  上から目線の回答に、俺は記憶の中の谷津の姿が浮かんだ。よく、しょうがない直してやるとか、しょうがないやってやると言っては、仲間の面倒を見ていた。  谷津は腕力が強くなかったが、一芸に秀でていた。しかも、谷津の電気とゲームに詳しい面は、仲間からも尊敬されていたので、かなり高い評価をされていた。 「李下さん、その人……」  李下を追い掛けて、テラス席のドアを開けた時に、上方で光るものがあった。咄嗟に俺は白光丸を出し、光を避けるとそれは刀であった。 「上月!中に入れ!」  李下も自分の刀を抜くと、俺の前に来て立った。 「李下さん、俺よりも、その教祖様でしょう?」  教祖は、自分が狙われている自覚があるのか、庭の木の陰に隠れようとしていた。しかし、既に見つかっていて、彼女に見つめられている。 「上月、中!」  俺がいると李下が集中できないようなので、俺は喫茶店ひまわりに入ると、志摩を背負った。 「守人さん、仕事の途中です」 「ならば、急いで解決しょうよ」  志摩が、箪笥から手を出して俺の頭をポカポカと殴っていた。 「又、変な事を考えているでしょう?だいたい、守人さんの考える事は分かります」 「ならば、補助して」
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