第六章 銀色

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 こんなに寝ぼけていて、大丈夫であろうか。しかし、客が来た瞬間だけは起きていた。 「はい、おはようございます。定食ですね」  金は自動販売機に任せているので、どうにかなるだろう。俺は走って、大学へと向かった。  大学に行くと、電車が一部止まっているせいで、学生が少なく感じた。駅のホームで殺傷事件があったので、そのホームも使用できなくなっていた。更に、犯人が捕まっていないので、大学にも警備が増えていた。  俺がいつもの席に座ると、息を切らせて五十鈴もやってきた。 「電車が使えなくて、自転車で来たよ」  五十鈴は、席に着くなり、かなりへばっていた。 「商店街も閑散としているよ。あちこち、黄色いテープだしさ……」  まず、犯人が捕まらない事には、安心して出歩けないという。  でも、犯人は村に連れて行ってしまった。最適な案としては、自害してもらい、遺書で懺悔であろう。その遺体は偽物となるが、×を解剖されるのも困る。 「俺のバイト先の近くだろう?怖いよな……」 「そうだよね。八重樫の隣の部屋だしね……」  そこで、八重樫の住んでいたアパートは、取り壊しになるだろうと言われていた。元々古いうえに、殺人事件まで起こってしまった。 「八重樫は、俺の部屋に転がり込んでいるしさ……」 「あ、幼馴染だっけ?」  そこで、俺は五十鈴を睨む。八重樫とは、同郷ではあるが、決して幼馴染でも、友人でもない。 「違う、同じ村の出身なだけだ」 「どうして、怒るの?まあ、八重樫先輩も問題児だけど、最近は大人しいでしょ」  最近は、小田桐がいるので大人しいのだ。このまま、同居となりそうなので、新しい住処を早く探しておきたい。  講義が始まろうという時に、不動産屋から連絡が入っていた。  八重樫のアパートは俺が探したもので、不動産屋は事故物件を今も俺に紹介してくる。でも、八重樫のアパートは、本当に取り壊しが決まってしまった。不動産屋が、八重樫の引っ越し先として、又、事故物件を紹介してきた。  こんなに事故物件というのは、多いものなのであろうか。地図を見ると、かなり駅から離れていたので、ここでは無理と断っておく。すると今度は、駅の近くを紹介してきた。これは、騒音問題で住む人がいないらしい。電車の音と、車の音で、二十四時間ひどい音となっているらしい。
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