第六章 銀色

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 俺もうるさいのは嫌いだが、ふと興味を持ってしまった。下見に行きますと答えておくと、不動産屋から了解との連絡がきていた。  講義は、真剣に大慈が聞いてノートを取ってくれている。俺は、不動産屋が紹介する物件を少し調べてしまった。  この騒音というのは、電車に近いせいもあるが、駅にも近く、又踏切にも近い。駅のアナウンスも入れば、絶えず踏切の音も聞こえる。でも、それを抜かすと、店に使用してもいいような、立地条件と面積を持っている。ここを住居にするのは、少し勿体ないのではないのか。  二階建ての一軒家で、元は住居兼美容室が入っていたらしい。そこで、二階に風呂などの設備があり、住居にもできると不動産屋はふんだのだろう。  更に過去を調べてみると、美容室の前は床屋で、親子三代続いたものであった。でも、床屋の客が減り、美容室県理容室として両方できるように変更した。それなりに顧客もいて繁盛していたが、ここを切り盛りしていた娘夫婦が結婚の翌日に事故死して、気力を失ってしまったらしい。  事故は、雪の日の車のスリップ事故で、空港に向かう途中であった。新婚旅行に向かった筈が、永遠に旅立ってしまったのだ。  八重樫も、家には様々な×が来るのであろう。むしろ、一軒家であったほうがいい。駐車場さえ確保できれば、ここはいい住居になりそうであった。  講義が終わり、俺は大慈に記憶を貰っておく。すると、大慈は色々と役に立つ本も読んでいて、まとめておいてくれていた。 「ありがとう、大慈」 「守人様は、少し、落ち着きがありません。もっと集中して授業を受けてください」  大慈が言うのは尤もであった。俺は、今も事故物件や、日本刀の彼女の事件が気になってしまっている。 「すいません」  でも、やはりあれこれ気になってしまう。
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