第七章 銀色 二

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 志摩の中は無重力になっていたが、取り込んだ家屋が並んでいて、まるで村のようになっていた。俺は、その家々を上から見下ろしている。 「……家々?随分、取り込んでいるね」 「はい。小田桐さんが見つけて、あちこちから取り込みました」  取り壊すのがもったいない程の、古民家であった。  そして、この世界は精神も自由であるのか、思った場所が見えてしまう。すると、村で彼女の姿を探していた。こちらの世界で日本刀を振り回し幾人も殺してしまった彼女は、次の祭りで生贄にされるべく、地下に監禁されていた。  そこで、堀江が遺体の複製品を作っていた。やはり、自殺で片づけるらしい。  次に、教祖を探してみると、村の記憶を消されてこちらの世界に戻されていた。今、教祖は、警察から事情聴取をされていた。十代の信者もいたようで、別の意味で法律に違反していそうだ。 「祭りがあるのか……」  地下に集められている×は、次の祭りで生贄にされて喰われてしまう。村では、こうして×との共存を歩んできた。俺もあれこれ経験し、風習も全ては否定しない。生贄が無ければ、×の暴走が増えるということも、理解はしている。  でも、今生きている者が、殺されてしまうというのは、やはり耐えられない。ましてや、今は慧一を村に置いているので、やはり不安で一杯になる。俺は、慧一や志摩が生贄に選ばれていたら、村を滅ぼしてしまいそうだ。 「皆、生贄に慣れているのだろうか?」 「いいや、皆、苦しみますよ。だから、生まれた瞬間に、この子は生贄だと決めて、家畜のように育てる家もあります」  それは、それで辛いと志摩は言う。  もしかして、志摩はだから名前が無いのであろうか。 「志摩、好きだよ……」 「はい。守人さん」  そこで、全身の志摩がやってきていた。志摩は、腕を伸ばすと、俺を抱き込んでキスをしてくる。手だけの志摩の時とは異なり、全身があると、志摩は人に思えてくる。志摩が人に思える分、どこか行為がリアルに感じる。 「守人さん」  志摩は、肩や首にキスをして、胸や背をそっと撫ぜてくれる。しかし、手に怪しい容器を持っていた。 「志摩、それは何?」 「慧一さんの薬です」  無害だと言いつつも、少し麻痺させる働きがあるらしい。それを志摩は指に掬うと、下に運んでいる。暫くすると、ツプっと刺さる感覚があり、志摩の指がくりくりとそこを回していた。 「志摩……気持ち悪いよ」
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