第八章 銀色 三

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 李下が手続きに手間取ったのは、×でもこちらの世界の住人という点であった。やはり、偽装の遺体か、身代わりが必要となり、作っていたので遅くなったらしい。そして、本人が×という存在だと、自覚していないのも問題であった。 「最近、色々とハイテクで大変で、村の×の赤ん坊の回収が鈍いかもね……」  こちらの世界で×が出してしまう影響というのも、少し分かってきた。異能、異形というのは隠していないと、こちらの世界では排除されてしまう。  では、もしかして、この谷津の行っているゲームなどで、×の子供は検索できないものだろうか。 「×の赤ン坊か。もしくは子供……」  すると、画面にその条件は何だと質問が来ていた。それは、×の定義であろうか。各家では見定めという人がいて、妊娠の段階からどちらなのかを監視されている。見定めの能力というのは、俺にはない。子供の見定めというのは、性別程には簡単ではない。  俺は定食をセットしながら、定義というのを考えてしまった。ハイテクでゆくならば、やはり遺伝子であろう。人以外の遺伝子を持つ者が、×であった。  物理的に言うならば、光に溶けるというのか、消える性質だろう。でも、それは太陽光や電気ではない。  考え事をしていたら、大量の定食を作ってしまった。でも、もうすぐ、氷渡に交代の時間になる。すると、仕事で疲れた会社員が、集団で来て定食を頼んでくれたので助かった。 「システム復帰されたのですか?」 「え、何で知っているの?ああ、ここで皆、嘆いていたのか」  システムが止まり手作業で仕訳したらしい。そこで、システムを復帰させたが、手作業で行った分の入力を終わらせないと、正常とは言えなくなったという。今は、手作業分の入力が終わり、新しい情報を動かし始めたところであった。 「それが、機械の処理能力が追い付かなくてね」  更新待ちで止まっているので、食事をしに出てきたらしい。 「そうですか……大変ですね」  今度は、コーヒーをサービスしておく。  そこで氷渡がやってきて、ビールの補充をしていた。 「氷渡、俺はあがりね。志摩を置いてゆくから、帰りにお願い」 「分かったよ。お疲れ」  氷渡が、振り返らずに、今度はツマミの準備を初めていた。  荷物の仕分けのように、人と×も簡単に分かればいいのだが、見た目では分からないのが難点であった。
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