第九章 銀色 四

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 そこで、居場所が特定できた者は、満千留に送信しておく。満千留もこのソフトを使用すれば、逃亡者を早く見つけられるのではないのか。すると、谷津からコメントが入り、ゲーム以外での使用を禁止しているとあった。  もしかすると、警察や市役所では、別のソフトを持っているのかもしれない。すると、再びコメントが入り、姿を検索すると姿を変えて逃げるから厄介なのだと教えてくれた。  しかし、満千留から連絡が入っていて、三人程捕まえる事ができたとあった。当人に見つかったと気付かれる前ならば、検索も有効らしい。 「しかし、捕まえるのが早い……」  柴崎の実行部隊も凄いということなのか。検索を止めようとしていたが、一人、検索途中になっていた。 『しょうがないな。危険なので、顔写真と照合して、上月の周囲一キロメートル内に入ったら警報にしたよ』  そこで、画面を見ると、警報ランプというのが追加になり点滅していた。 「点滅している。どうやって止めるの?」  青い点滅から、黄色の点滅に代わり、それが赤になった。 『同じ電車にいる!』  そこで、のんびりと満千留に同じ電車に逃亡者がいると知らせると、一瞬、周囲が暗くなった。そして、前に銀二が立っていた。 「守人様、動かないでください。向こうが守人様に気付きました」  どこから移動してきたのであろうか。あまりに瞬時で、よく分からない。しかも、他の乗客には記憶操作しているのか、突然人が増えても全く気付いていない。  隣の車両から、ニメートルもありそうな長身の男が入ってくると、横にいた女性を殴り飛ばしていた。しかし、誰も騒がない。見えないように、視覚操作されているのかもしれない。  次の人を殴ろうとした瞬間、二人の男に取り押さえられると、走っている電車の外に飛び出していた。 「ドアが開いたね……」  それでも、誰も騒がない。 「私は、少しお送りいたします」  しかし、次の瞬間に悲鳴があった。 「きゃあああ」  女性が血を流して倒れている。隣の車両でも悲鳴があがり、やはり幾人かが倒れていたらしい。 「守人様の気配を消しています。駅に到着したら、ゆっくりと移動して学校に行ってください」  駅に到着すると、救急車や警察が待機していた。全員を確認しているが、俺はその横を過ぎて改札を出る。駅前で、銀二は手を振って帰って行った。  大学でいつもの席に座ると、五十鈴が走ってきていた。
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