第九章 銀色 四

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「殺人犯は捕まったね。商店街も徐々に人が戻ってきたよ」  しかし、総菜屋は影響が出ているようで、休業になっていた。それは、社員が帰宅途中で事故死したので、葬儀もあるのだろう。 「しかし、最近おかしいよね。事故、殺人、今日の電車は何だろ?事故になるのかな?連続して起こっている」  電車では、皆も本人も何が起こったのか把握していなかった。突然、何かに衝突し、殴られた状態になったという。報道では、突発的に発生する揺れがあるのではないかと、線路の検証もされていた。中には、線路に石が投げ込まれたなどの説も出ていた。 「上月、その電車に乗っていたのではないの?」 「車両が違ったからさ……それに皆警察に捕まって住所とか聞かれていたけど、俺、素通りできたし」  そこで、俺が多分幼く見えたので無関係と思われたのだと、笑われていた。 「でも、上月も心配だよね。で、電車とか揺れたのかな?本当に局部的な揺れ?」  確かに、遭遇率が高すぎる。  すると、画面に谷津からコメントが入っていた。村から逃げた×は、無意識に守人様の周辺に集まるらしい。ここには、太陽光があるというのに、やはり光に惹かれると書かれていた。すると、まだまだ、俺の周囲には事件が発生してしまうということなのか。  ややうんざりしていると、五十鈴が画面をのぞき込んでいた。 「それ、何のゲーム?」 「あ、全然、流行っていないものだから」  隠したので余計に詮索されてしまった。そして、携帯電話を取り上げられて、画面を見た瞬間に電源が落ちた。 「え……壊れた?五十鈴……」 「ごめん」  しかし、ポケットに戻した瞬間に復帰していた。これは、谷津の操作であろう。  講義が始まり、今日も大慈はいたが、真面目に受講する。そして、図書館に行き、大慈の読みたい本を借りに行った。 「李下さんも、よく図書館に連れて行ってくれます」  大慈は嬉しそうに本を選んでいる。でも、かなりの専門書で、俺の方が付いていけない。 「氷渡さんの本も、八重樫さんの本も読みました。便利だと褒められました」  ついでに、俺の記憶にも法律と医学が増えたらしい。 「大慈、建築もお願い……俺、家って屋根と壁があるくらいしか認識していない」 「そうですね。読んでおきます」  そこで、あれこれ本を借りるとリュックに詰めた。 「さて、次の講義も真面目に受けるぞ」
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