第九章 銀色 四

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 進化系と言うのかは分からないが、このゲームは自分で作れる部分があるのだ。そして、この警報や、知りたい情報の検索方法など、売買して収益を得られる。  つい簗木を追跡してみると、谷津からコメントが入っていた。簗木は、ちゃんと申請を掛けてこちらの世界に来ていたのだが、仲間が逃げてくる手助けをしてしまい、逃亡者と同じく監視されていたらしい。  そこで、俺の警報が鳴ったので、簗木は辞職して逃げようとしていた。でも、柴崎は手助けをして連れ出した者の名前と、現在の居所を教える条件で、そのまま講師を続けるように指示したという。 「情報が速い」 『決まっていた事だからね』  簗木には、俺の護衛の任務も付けられたという。簗木に何が出来るのかと考えていると、家庭教師が出来ると回答がきた。この年で、家庭教師を付けられたくない。でも、簗木は薬剤師でもあるので、相談相手になってくれそうだ。  これで、簗木では警報が鳴らなくなった。  午後の授業が終わると、俺は駅前の不動産屋に寄ってみた。すると、事故物件の地図と鍵を渡してくれた。もう俺には、案内も付けないらしい。 「明日、鍵を返してね」  相当、酷い状態になっているらしく、住めるか不安とも言っていた。長く人が住んでいない家は、どんどんボロくなってゆく。 「ええと、修理とかリフォームをしてもいいのですね?」 「しないと、住めないよ」  修理もしていない代わりに、格安で貸してくれるという。 「行ってみます。明日、鍵を返しに来ます」  そこで、不動産屋を出ると、一旦自宅に戻った。そして、バイトをしていた、俊樹に声を掛けると再び出かける。 「あの、守人様、護衛は付けないのですか?」 「いないよ」  非常階段を降りると、二階から駅へと向かう。その途中で、パンを購入すると、俊樹に渡した。 「甘いですね。パンなのに、お菓子みたいです」  村のパン屋もおいしいが、ここのパンはお菓子に似ている美味しさだった。あまり量は食べたくないが、一個食べる分には美味しい。 「ここが、駅の改札」  すごく久し振りに、切符を買ってしまった。 「ホームで電車を待つ」  俊樹が目を輝かせて、電車を見ていた。こんなに、喜ばれると、俺も嬉しい。
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