第一章 雪みたいに花みたいに

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 これは、たまに発生する現象で、中古の品に不幸が宿っているようなものだ。  仮に守護霊というものがあったとする。それは、死んだら大切な人を守れるというのではない。死んだら、生きているという拠り所を無くし、同じ趣味や、同じ仕事、同じ立場などという、同じ何かに惹かれて寄せられてしまう。そうやって、残った自我を保ちつつ、補佐をするのだ。  昔は、大切な品の形見分けなので、好きなものを頂き、故人の何かを継承していた。これはプラス方向の、霊の援助に近いもので、それ自体は悪くはない。  でも、マイナスを引き継ぐ場合がある。それが、事故車などであった。 「兄貴は車で彼女が自殺未遂していた事を、秘密にしていた。そして弟は、彼女を送って行った先で、居眠りをしたトラックに後ろから追突された」  車は大破したが、運転手は軽傷で済んだ。だが、彼女は車から降りる瞬間で、シートベルトをしておらず、ドアも開けられていた。彼女は車に激突してから更に飛ばされ、民家の塀に激突していた。 「彼女は病院に運ばれたが、搬送先で死亡。車は廃車になった、筈だった」  それが、八重樫のアパートの前に止まっていたらしい。 「勘違いではなくて?」 「ナンバーが、俺の誕生日と同じだった。そんな偶然が度々あるのかな?」  それは、人気の車種であるので、廃車と偽って修理されたのかもしれない。  説明を受けてから車を見ると、何か、禍々しいものを感じる。 「……あの、八重樫。俺が事故物件に住めるのは、霊とかの類を信じていないからで、それ以上ではないよ」  俺は、事故物件のスペシャリストではない。 「でも、光は闇を払うでしょう」  そこで、俺は志摩に手を出して貰い、その中に飛び込む。 「これは闇の仕業ではないし、この車に何かがあるのでしょ」  車は乗り物であるが、その人との相性というものもある。小さな癖で,慣れる時もあるが、致命傷になる時もある。相性が悪いと感じたら、素早く手放すというのも、一つの手段かと思う。人気の車種とかに、惑わされてはいけない。 「でもね、この車に、俺、女性の影を見るよ」  八重樫は、車の画像の窓の部分をしきりに指さしていた。でも、俺には何も見えない。何も見えないのだが、感じるものはある。 「……それ女性ではないよ」  八重樫は、何度も確認して、女性だと主張している。そこで、氷渡も来ると、画像を見ていた。
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