第十章 銀色 五

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 俺が赤い風船を見上げていると、俊樹が頷いていた。 「長男や長女は家にとって必要かもしれませんが、次男、次女という次のものは家にとって重要ではありません」  重要ではないので、かなり自由で、自由というのは裏を返せば何もない。 「俺の親は、次男、次女は面白かったと言いました。子育ても、肩の力が抜けていて、一緒に遊ぶ仲間だったとか。そして、×は世界が違っていて分からない反面、あれこれ人に聞いたり理解しようとして、世界が広くなったと」  家族に×がいないまま育てば、×は未知の存在かもしれない。 「この風船や、溶けるだけの雪のような存在でもいいのですね」  例えが侘し過ぎる。
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