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「風船は空に消えても、雪が水になっても、一緒に遊んだ仲間だ!」
そこで、風船を離しそうになり、俊樹が慌てて捕まえてくれた。そして、風船の紐を、俺の手首に結んでいた。
「ほら、これで手を離しても大丈夫ですよ」
「俺は、園児か!」
そこで立ち上がって歩き出すと、風船を腕に付けたままであったので、あちこちで笑われていた。そこで、通りすがりの子供に、風船を渡すと、頷いておく。子供は、風船を持つという任務を与えられ、真剣に歩き去っていた。
「守人様……」
「上月でいいよ。俺の方が年上だけど、様では呼ばれたくない」
でも、俊樹は上月とは呼びつけには出来ないらしい。
「上月さん、会えて良かったです。でも、何でしょうか……色々、問題も分かりました……」
まず、皆が言うが、俺には護衛が必要だという。余りに危険で、見ていられないらしい。例えるならば、歩き始めた子供が、一人で国道の横を歩いているようだという。
「どういう例えだ……コメントが出ないよ」
「でも、そういう場面を見たら、危ないからダメだよと言いたくなるでしょう」
確かに言いたくはなるが、それでも、やはり例えが違っているだろう。
今度は焼いている焼鳥を買うと、俊樹に渡してみた。
「冷まして食べて下さい」
でも、焼き鳥は熱い内が美味しいだろう。
「これは、熱くてもいいの」
でも、油断してはいけないので、熱かった時のため、自動販売機でお茶を購入しておく。
「八重樫さんの部屋なのに、どうして上月さんが探しているのですか?」
「八重樫、試験で一杯でしょ、部屋の心配なんてしている場合じゃないだろ」
八重樫の夢が医者ならば、俺も少しは応援してやりたい。でも、同居するのは絶対に嫌であった。
でも、事故物件ばかり行っているが、普通の部屋でもいい。しかし、小田桐が俺の見に行った物件を確認して、修理できるかもしれないと言ってきた。
「あれ、建て直しの方が早いのではないの?」
そうすると、小田桐から返信が届いていた。志摩の中に保管している蔵があり、その敷地面積が、あの建物と同程度らしい。名目は修復なのだが、蔵をそのまま置いてしまうらしい。
蔵のほうは、窓を追加する事により、住める状態になりそうだった。
「でも、撤去費用とかがかかるし……蔵を置くなら、今の屋上の内風呂を撤去してその場所の方が早いよ」
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