第十章 銀色 五

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「上月、一緒に風呂に入ろう」 「嫌です。八重樫は時間があるのでしょ。後にしてください」  でも、風呂に八重樫も入ってきていた。  週に何回かは、志摩と風呂に入り、全身洗濯機のごとく、洗って貰うのだが、毎日とはいかない。  体を洗い、頭を洗おうとすると、八重樫が湯舟に入っていた。 「俺の闇のせいで、事件になるからさ。小田桐が、光の結界のある、ここの場所がベストだと説得してきた。ごめんな、いつも迷惑をかけて」  俺は腹を立てていたが、八重樫が愁傷になると、どこか悲しくなってきた。やはり、八重樫は図々しくしているほうが、イメージに合っているのかもしれない。 「迷惑はいつものことです」  そこで、少し八重樫が笑っていた。 「そうだよね。でも、俺は本気で上月を一生食わしてゆくからさ」  いつもの八重樫に戻った気がする。  そこで、試験の勉強ばかりしているが、八重樫にもあれこれ噂が入っていた。いろいろありすぎて、かなり昔のような気がするが、惣菜屋の青い車は、八重樫も気にしていた。 「重なると脅威が増すというのかな……」  度重なって人の命を吸っていると、車が生き物のように感じてくるという。青い車は、既に自分の意思を持っているようだった。 「機械に生命感が出てくる」  機械と人との差は、知能を持っているのかではなく、生きたいという思いだという。機械は生きたいという思いはないが、人は生きたいという思いから思考が始まっている。 「あの車には、生きたいという思いがあった。そして、より人の命を欲していた」  ここまでくると、スクラップにするしかなかった。 「人の命を吸って、機械も生命感を持つのですか……」  それは、ソフトにも当てはまるのであろうか。谷津の造ったゲームは、使用していると、人のような感じがしていた。それは、谷津がコメントを入れるせいもあるが、視線を感じる時もある。 「そういえば、総菜屋、葬儀でしたよね?」  従業員が亡くなったので、休業になっていた気がする。全員で、葬儀に行っていたのであろう。 「いや、家族葬だと聞いたよ。ほら、別の事件も発生したしね、何か有名になってしまって野次馬も増えたらしくて」  惣菜屋が休業しているのは、機械の故障らしい。古い機械だったので、入れ替えた方が安く、機械を購入し店を継続するのか、それとも廃業するのか、家族会議しているとの噂であった。
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