第一章 雪みたいに花みたいに

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「女性は見えないけど、確かに気配はあるね……」 「どっちの?」  そこで、氷渡も男性だと主張したので、今度は黒川が画像を見ていた。ついでに、李下も画像を眺めに来た。  そこで、李下は言い難そうに頬を掻いていた。 「李下さん、何か分かりますか?」 「……これ、男性だけどね。八重樫君と同じでね……その、男にね……愛されていて、女性化している」  この場合の女性化というのは、体の事ではなく、精神の方であった。そこで、俺と氷渡が、八重樫を見てしまった。一族の当主にならなくてはいけない男が、女性化してしまっていいのであろうか。 「……俺も、ですか?」  李下が頷くと、八重樫はがっくりと肩を落とした。 「そうだね、小田桐には我儘を言っても許されるとかの発想がね……女性的かもね」  李下も容赦がない。 「この人は、女性を恨んでいる。でも、自分の内面に女性を見る。自己嫌悪で、どんどん自分を痛めつけてしまう」  そして女装してみて、その醜さに吐いている映像が見えたという。女性になれないのならば、男に愛される自分は何なのだと自問自答する。男が、自分を見て男だとがっかりしないように、美しさを求める。男でも、女でもない、夢の生き物を作り出す。 「……夢の生き物?おかま?」  男は意外にデリケートで、夢見がちだ。連れて歩く女性が、可愛いとかきれいとか褒められると、有頂天になる。逆に、ののしられるような者だと、萎えてしまったりする。自慢できる恋人というのは、ステイタスなのかもしれない。 「女性よりも男性の気持ちが分かり、肉体の仕組みを熟知し喜ばせる。でも、女性ではなく、そして男性でもない」  夢の生き物を作り出そうとした、壮絶な人生の人がいたのか。 「過去を見るとか、リルの能力ですね」 「そうそう、暗殺部隊で牧草を食べてね。能力を皆で、吸収してみた」  リルが最後に変化した、牧草を食べたのか。 「その人は、この車で初めて男性経験をして、そして、酷い別れも体験した」  そして、女性を憎み、殺し続けている。
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