第十一章 機械が笑う時

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 既に、危害を加えられているような気がするが、男は真剣に言っている。それに、既に部屋から出され、廊下に連れ出されていた。  手も押さえられていたが、どうにか画面を見る事ができた。すると、谷津のコメントが入っている。 『彼らは市役所の職員のようだよ。守人様の護衛になる筈の人だった』  守人様の護衛になる予定であったが、俺が守人様を棄権しているので、仕事がなくなったらしい。谷津によると、年金課とその他対策課という部署に移動になっていた。  俺が引き摺られて移動していると、廊下に寝ぼけた黒川と、疲れた李下が出てきた。 「……俺が誰か知っているよね?本気でいいかな?」  寝ぼけた黒川は、殺気を抑えていなかった。黒川は、眠りを邪魔されて、腹が立っているのかもしれない。しかも黒川は、既に刀を抜いていて、目が虚ろになっていた。  李下の方は、幾度も溜息を吐くと、疲れたように又溜息を吐く。やはり李下も、眠りを邪魔されて怒っているようだ。 「そうだね……俺達、これでも五強よ……村の護衛に負けると思う?」  何となく、問いかけが脅迫に感じる。  俺は手に光を集中させると、振りほどく。 「アチチチ」  そこで、タオルも外すと手で×を作る。 「ここで戦闘は禁止」 「上月……逃げられるならば、早く逃げてください」  李下が、再び溜息をつく。 「この人達、何がしたいのかなと観察してしまいました……」  そこで、事情を聞くと、市役所に俺を連れて来たら、護衛課の取り潰しを少し検討してくれると言われたらしい。 「守人様を拉致するのは、掟破りですよ」  そこで、李下が紐に手を掛けていた。 「拉致などするつもりはありません。ただ、村では守人様を必要としています。その事を伝えようとしたのですが、切り出せなくてウロウロしておりました」  早朝にウロウロしていたら、不審者であろう。 「お前らは帰れ!上月、眠るぞ!」  黒川は俺の手を引くと、部屋に戻ろうとしている。そこで、先ほどの男が俺の腕を掴もうとしたので、黒川が止めた。更に男が黒川に殴りかかろうとするので、黒川は俺の腕を離した。黒川は殴ってきた男を避けると、蹴り飛ばしてした。そこで、後ろに下がったところを、珍しく黒川が殴り込んでいる。  黒川が素手で戦うなど、俺は見た事がなかった。細身に見える黒川だが、かなり腕力があるのか、殴られた方は吹っ飛んでいた。 「……守人様を村に返せ!」
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