第十一章 機械が笑う時

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 吹っ飛ばされた男が立ち上がってきたので、黒川が少し笑っていた。 「黒川、刀は使用しないでね。殺してしまうからさ。素手なら、少し遊んでいていいよ」  李下は、やはり俺の腕を掴んで部屋に戻そうとしていた。 「この守人様を何度仮死にした?仮死というのは、死と同様。その苦しみを、幾度も味合わせて、それでも、村のものだと言うのか?」  李下は、俺の仮死を起こしにきているので否定できない。 「村は守人様を必要としています。結界がいつ出来るのかと、皆、待っております」 「……その結界も張らせないのは、市役所でしょう?守人様に恨みを押しつけて、今度は何をするのでしょうか?」  静かだが、これは李下も怒っている。確かに早朝で、かなり眠い。その上、必要とするのならば、まず頼みに来るのが筋ではないのか。 「生活安全課の戸田ですね。あれは問題ですね。でも、俺達は……守人様をお守りしたかった……そのために訓練してきたのに、守人様は棄権してしまった」  状況的に、柴崎と対立も出来なかったし、棄権もやむを得ない選択だったろう。そして俺は、守人様になりたくないし、生贄の風習のある村に、志摩と慧一を置いておきたくなかった。慧一は村に戻ってしまったが、俺は非公認ではあるが守人様になったので、俺と契約した×は生贄には出来ない筈だ。 「それに、村で一番問題のある、暗殺部隊の連中が常に傍にいる……」  これも否定はしない。永新も安居も、どう考えても性格に問題がある。安居など、ペットの性格にも問題がある。 「上月は、守人様だけどね、そのせいで多数の不幸にあって来た。これ以上、上月を不幸にしない方法を考えて欲しいよ」  守人様という存在である事が、恵まれているのではない。 「……だから、守りたかった……全てから守りたくて、お待ちしていたのに……ずっと見ていたのに」  手にした携帯電話の画面には、谷津のゲームがあった。そこで、俺を追跡すると違反になるので、周囲の人を追跡していたらしい。ちなみに、黒川も追跡不能で、李下も暗殺部隊であるので、追跡不能であった。  五十鈴を追跡し、光二を追跡していた。 「光二を尾行していたのか?」  俺は守人様で原因であるので仕方がないが、光二は普通の×なのだ。 「それに、五十鈴は村の人ではないよね?」
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