第十一章 機械が笑う時

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 守人様というだけで、周囲に不幸をもたらしてしまうのならば、守人様などいらない。俺は、白光丸を出すと自分の首に当てた。 「俺が元凶ならば、殺してしまおうか……」  何もかも、俺が元凶で不幸にしてしまう。 「守人様と契約している×も死ぬでしょう?それでもいいのですか?」  そうか、俺はまだ死ねないのか。 「ならば、仮死で眠る事にする。もう二度と目覚めない……」  そこで、自分の首に刀を当てると、痛いというよりも熱い感触がした。皮膚が切れたのか、血が流れて服を濡らしていた。 「すいませんでした!我々は存在を知って欲しかったのです!守人様を護る為に存在していたと、ただ知って欲しかった……」  かなり深く首を切ってしまったのか、血が吹き出してきてしまった。傷口を手で押さえてみたが、それでも止まる様子がない。 「ゴホゴホ、分かったよ。では、生活安全課に移動してよ、一緒に結界を維持していこうよ……結界の維持という名目で、警護もできるでしょ」  手からも血が溢れている。李下も慌てて傷を押さえようとしたが、俺の血は猛毒らしい。李下の手に水膨れが出来ていた。 「瓶に詰めて売るか……これ高値でしょ」  黒川も戦闘モードを解いていた。相手も、俺の血にウロウロしている。  黒川は、本当に瓶を持ってきて、流れた血まで回収していた。黒川は風を操る能力があり、風で液体も回収できるらしい。 「黒川、そういう問題ではないでしょ」  俺は、光を集中して血を止めようとしたが、なかなか止まらない。出血で意識が遠くなってしまいそうであった。もしかして、光で切った傷は、光では癒し難いのかもしれない。  意識が無くなりそうになる前に、どこからか巨大な蛇が出てきて、俺の首を舐めていた。 「ヘビ……どうしたの?出てきたの……光は平気?」  蛇が俺に巻き付きながら、じっと見つめて来る。  黒川が蛇に刀を向けたので、俺は手で止めておいた。 「この蛇は飼っているモノ。俺が心配で出てきたみたいだ」  蛇は糸を吐くと、俺の傷を塞いでいた。糸は、傷口を縫うように走ると消えてゆく。 「ありがとう。血が止まったみたいだ……」  でも、かなり出血してしまい、立っていられない。倒れそうになると、黒川が抱えてくれた。 「そこの奴ら、生活安全課だ。戸田を追い出し、この守人様を護って欲しい」  そこで、珍しく黒川が頭を下げた。
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