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「分かった。戸田を追い出すから、結界の契約をしに来てください」
そこで、男達が去って行った。黒川は俺を抱えると、部屋へと帰ろうとしていた。
「黒川さん、自分で歩けますので降ります」
その抱え方というのが、片手で俺を腕に座らせている。まるで幼児が、父親に抱えられているような恰好であった。
その片手というのが、どうにも俺のプライドを傷つける。せめて、背負ってくれたのならば、まだ恰好がつく。
「ダメ。フラフラでしょう?全く、この血を競売にかけて、儲けたお金で、船旅でもしようかな」
黒川がビンを振っていた。どうして船旅なのかというと、俺がどこかに行っても、船の中なので安心だという。
「俺と船旅ですか?」
「そうだよ。俺の守人様でしょ」
部屋に入っても、黒川は俺を離さない。でも、黒川の手が震えていて、かなり動揺していたらしい。
「上月、老衰で死んで。でも、もう俺達が生きるのに飽きた頃まで生きていて……」
黒川が、俺の背を叩いていた。
「……頼む、上月……怪我をしないで」
志摩の手がやってくると、黒川ごと俺を包んでいた。黒川はそこで、俺を離したが、今度は頬や額、口に幾度もキスしてくる。
「俺の、守人様。こんなに、無鉄砲で儚い存在は知らなかった……お願い、もう、俺の前で大切な人が死ぬのは嫌だ……生きていて」
黒川が哀しい顔をして、俺にキスするので、志摩も黒川の背を撫ぜていた。
「ごめんなさい……」
黒川を悲しませるつもりはなかった。
すると、珍しく李下も志摩の手に潜り込んでいた。
「志摩の手の中って、こんな感じか……」
やはり、俺の血を見て、李下も動揺したらしい。
「戦闘で小さな擦り傷は見てきたのにね。ちょっと動揺したね……」
李下は、俺の仮死も思い出して、倍、辛くなってしまったという。
「俺の守人様……そうだね、俺もそう思う。これは、俺のだ」
李下も一緒になり、三人で少し眠ってしまった。
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