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僕は落胆し肩身を更に縮める。
「ばっかじゃないの?あなたには私が不幸に見えるの?私が毎日どれ程笑っているか知らないの?がっかりだわ」
少しだけ潤みを含むその言葉を僕に投げつけるとプイッと顔を背けた彼女。
掛ける言葉が見つからない。
黙り混む僕に彼女は鼻をすすりながら僕を睨み付けた。
その表情すら可愛らしいと思ってしまう。
「余所には余所の幸せ。うちにはうちの幸せがあるのよ。知らなかった?強がりでなく、私は今とても幸せよ。それなのに、あなたが私を不幸と思ってるなんて、腹立たしくてならないわ」
耐えきれずに彼女はテーブルの上に広げたチラシをサッと掻き集めて束ね古新聞入れへと乱雑に投げ入れた。
ただそれを目で追うしか出来ない情けない僕。
「ばか」
そう言って、戻ってきた彼女は僕の膝の上に当たり前のように座ってきた。
彼女の腕が僕の首に甘えるように絡み付く。
「あの日の事、もう忘れちゃった?」
僕の肩に顔を埋めながら言ったから、その言葉は少しくぐもっていた。
「……え?」
「虹よ、虹。二人で見たの、ちゃんと覚えてる?」
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