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そして、それを見付けた途端に嬉しそうに叫んだ。 「あっ、ほら。虹だよ、虹!」 その言葉とほぼ同時だった。 あんなに暗かった空が急に雲を散らばせながら青く光り始めた。 まだその雲の行く先のその向こうに虹が大きくはっきりとした輪郭で掛かっていた。 映画一つ、計画が崩れたんだ。 それならプロポーズだって順番を変えても良いんじゃないか。 一つの虹が戸惑う僕の背中を押す。 言うなら今しかない。 言葉だって、人のパクりじゃなく本心を伝えたい。 鼓動が早まる。 多分、車の窓を曇らせている原因は僕から発する大量の湿気だと思った。
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