第一章 雪みたいに花みたいに

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 台風が来るからと、雨戸を閉めてみたが、嵌め殺しの窓からは外が見えていた。 雨が次第に強くなり、人の通りはめっきり減った。  ここは、駅ビルの屋上で、元風呂屋の物件を改造して住んでいる。 「バイトに行こうかな」  俺がドアを開けると、強い風が部屋の中に吹き込んできて、 一緒に李下(りか)も走り込んできた。 「店を閉めたよ。下の店も閉めているからね……オーナーから連絡があって、 今日は休みでいいそうだ」  李下は、俺の住んでいた村で公務員をしている。 しかし、俺の警護と見張りを兼ねて、ここで同居していた。
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